化学物質の自律管理
今後どうなる? 化学物質管理者の講習は必要?
今後大きく変わる化学物質の管理、一体どのようになるのか。
この化学物質の管理は、今まで日本型だったものが欧米型になる、というところだ。 日本型というのは、いわゆる有機則や特化則のことを言う。 有機則は完全に屋内作業のみに焦点を当てていて、屋外での取り扱い作業についてはノータッチであった。 化学物質は屋内であろうと屋外であろうと揮発はするし、作業者が吸い込んでしまうことには変わりないというのにだ。 特化則はどうかというと、これも基本的には屋内の話ばっかりだ。 屋外での要求事項もあるのだが、それは取り扱ったら作業記録を残すということと、常時取り扱いであれば健康診断を受けるということ。 基本的に「事後」の話であり、ばく露の予防といった話はなかった。
屋内ではしっかり管理されているのかというと、これもまた微妙だった。 6か月に1回程度の頻度で、屋内作業場の作業環境測定を行わなくてはならない。 この作業環境測定、正しく行えば効果はあると言えるのだが、、、実はその測定日に当該化学物質が使われていなくてもOKな法令の建付けになっているらしい(作業環境測定士の資格は持っていないので、それほど詳しくないのだが)。 しかも、極めて少量の対象化学物質をドラフト内で使用しても、この測定は同様に行わらなくてはならず、まったくリスクベースの管理ではなかった。
それに加えて、毒性が高いと分かったら有機則や特化則のリストに入ってくるので、対応が後手後手となってしまうことが多いようだ。 しかし、もちろん様々な要求事項があり、これらの化学物質に関しては有害性とは裏腹に事故は少なかったと厚生労働省は言っている。
この有機則や特化則となっている化学物質はせいぜい123物質程度であり、一番の問題は、このリストに入っていない多くの化学物質であり、8割の化学物質関連事故は123物質以外で発生しているとのことである。 では、123物質以外の化学物質をどのように規制するか、これが厚生労働省にとっては大きな頭痛であった。
そして今回大鉈を振るった。 123物質はそのまま残すようであるが、その他多くの化学物質に(全部で2900物質程度)規制をかけることとした。 それが欧米式の「自律的な管理」と呼ばれるものとなる。
大雑把に言えば、「全部の化学物質を規制管理するのは無理だから、自分たちで有害性とか危険性をしっかり調べて、作業員にリスクが無いようにちゃんと管理してね」というものだ。 今までは有機則や特化則の要求事項に沿って、それだけを実施していれば問題なかったのだが、今後は自分たちで考えて最善の管理をちゃんとやってね、というのだから難しい話と言える。 それから「化学物質へのばく露」という言葉が出てきたのも大きな変化である。 もちろん溶接ヒュームの話で出てきたので、あれを全て化学物質でやればいいのか、と考えた人もいるかもしれない。 「ばく露」というのは体に取り込んでしまうことを指す。 ばく露の測定という言葉が出てきて、測定方式も欧米で主流の個人ばく露測定にシフトしたことになる(今まで行ってきた作業環境測定とは異なる)。
それから今後は「化学物質管理者」というのを各事業所におき、その人を中心に化学物質管理を実施していく必要がある。 ただし化学物質管理者が全てを知っている必要はない。 必要なのは化学物質に対しての正しい「感覚」であると私は思っている(個人的な意見)。 「これは危険かもしれない」「ばく露があるのかもしれない」という感覚さえあればそれでいい。 その後の調査や測定は専門家に依頼すれば終わる話だからだ。 全体的な管理の手法については別途まとめていきたい。 このブログを見れば全てが分かるようにしたいが、かなり大掛かりな話なので別にまとめよう。